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シンガポール不動産コラム(詳細)

2026.05.20 NEW
【シンガポール賃貸・退去】適切なデポジット返金のために知っておきたいこと

シンガポールでは、賃貸住宅の退去時にセキュリティデポジット(日本の敷金に相当)の取り扱いを巡ってトラブルになることが日本よりも非常に多く、現地に駐在する日本人の方々にとっても悩みのタネのひとつとなっています。

これは商習慣の違いの影響が大きいでしょう。日本では物件オーナーの8割以上が、管理会社にテナント対応を含む日常の物件管理を任せている一方、シンガポールでは「テナント付けのみをエージェントに依頼し、管理は自分で行う」というオーナーが多く、管理会社に委託している割合は2~3割程度(ただし、非居住外国人は管理会社の利用は多い)と言われています。

そのため、シンガポールでは日常のトラブルや退去時の交渉は、テナントとオーナーの直接対決となりやすく、客観的な視点が入らない分、トラブルに発展しがちになると考えられます。

そこで今回は、できるだけオーナーと揉めることなく、スムーズに退去手続きを進められるよう、セキュリティデポジットの返金にあたって、知っておきたいこと、やっておきたいことなどをご紹介したいと思います。

セキュリティデポジットとは?

シンガポールの賃貸契約における「セキュリティデポジット」とは、日本の敷金に当たるものです。家賃の滞納や借主の過失による設備の破損などに備え、オーナーが借主から入居時に預かり、退去時に状況に応じて返金することになります。

日本では、家具や家電製品、照明、カーテンなどは居住者自身で用意するのが一般的です。そのため、借主負担となる可能性がある摩耗損耗の対象は、床や壁のキズ、トイレやバスルームの設備の破損などに限定されます。

一方、シンガポールではエアコン、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、ソファー、ダイニングセット、ベッドなど、生活に最低限必要な家具・家電製品はオーナーから提供されているのが一般的です。よって、退去時にこうした設備に不具合や破損などがあった場合も、その修理代や交換費用が借主に請求されることになります。

セキュリティデポジットは、2年契約の場合、家賃の2ヵ月分となるのが一般的な相場です。家賃が高額なシンガポールでは、ファミリー向け物件であればたとえ2ヵ月分でも100万円~200万円といった金額になってくるため、セキュリティデポジットを守れるかどうかは軽視できない問題と言えるでしょう。

シンガポールに原状回復のガイドラインはない

日本には国が定めた「原状回復ガイドライン」があり、厳格な基準の中で経年劣化や通常の摩耗損耗を考慮した適切な敷金の返金が行われています。一方、シンガポールには原状回復を巡るこうした公的なガイドラインはなく、各賃貸契約書に記載されている内容をもとにオーナーと借主で話し合いをすることとなります。

シンガポールの賃貸契約書の原状回復に関する条項には、「物件を良好かつ居住可能な修理・維持状態で貸主に明け渡すこと」といったような内容とともに、「Fair Wear and Tear excepted (通常損耗・経年劣化を除く)」という除外規定が含まれているのが一般的です。こうした除外規定が含まれていれば、本来、生活の中で自然につくようなキズや汚れは借主の負担で直す必要がありません。

しかし、公的なガイドラインがない現状では、通常損耗・経年劣化の判断を巡ってトラブルになりがちで、最終的に立場の強いオーナー側に押し切られてしまうケースが多々あります。

こうした状況をできるだけ避けるためにも、シンガポールで賃貸契約を結ぶ際には自分の身は自分で守るという「自衛の精神」が不可欠です。入居時に部屋や設備の写真・動画を細かすぎるくらい撮ることは、デポジットを守る上での最低条件であり、オーナー側に付け入るスキをなるべく与えない状況を作り出していく必要があります。

退去前に借主側で必ずすべき3つのこと

1.エアコンメンテナンス

シンガポールは年間を通じて高温多湿な環境でエアコンが不可欠なことから、賃貸契約では1年に4回(3ヵ月に1回)、テナント側でエアコンメンテナンスを行うことが義務付けられています。そのため、退去前(退去の1~2週間以内前が望ましい)に最後のメンテナンスを行い、これまでに行った全てのメンテナンスレポートをオーナー側に提出する必要があります。

もし最後のメンテナンスを行わなかった場合、1回のメンテナンスに要する実費が請求されたり、場合によってはケミカルクリーニングの実施を要求されることもあります。また、紛失などによってオーナー側にレポートを提出できない場合は、賃貸契約期間中に実施すべきであった合計回数のメンテナンス費用+αが請求されることもあるため、定期的なメンテナンスとレポートの保管は必ず行いましょう。

2.カーテンのドライクリーニング

入居時からレースカーテン(Day curtain)や遮光カーテン(Night curtain)が設置されていた場合、退去時にドライクリーニングを実施し、領収書をオーナー側に提出する必要があります。近くのクリーニング店に持ち込んでドライクリーニングを行っても良いですが、取り外し・設置時の労力や破損のリスクなども考えると、クリーニング業者に取り外しから設置までを依頼してしまうのがおすすめです。

ただし、テナントが入れ替わっても基本的に同じカーテンを使い続けるため、擦り切れや穴が空いてドライクリーニングできないこともあります。その場合、オーナーによってはカーテンの交換費用がそのまま請求されることもあるため、当初からカーテンの状態があまり良くなかったことをオーナー側に説明できるよう、入居時に証拠となる写真を撮っておきましょう。

なお、カーテンの状態が悪い場合、次のテナントによるリクエストやオーナーの判断によって交換となることもあるため、事前にオーナーに相談して、ドライクリーニングを実施する必要があるかどうか判断を仰いでおくといいです。

3.お部屋のプロフェッショナルクリーニング

退去の前には、清掃業者を手配してプロフェッショナルクリーニングを実施し、領収書をオーナー側に提出する必要があります。ごくまれに、賃貸契約書にプロフェッショナルクリーニングに関する条項が入っていないことがありますが、その場合でも無用なトラブルを避けるために実施しておくことをおすすめします。

もし、オーナー側から清掃の不備を指摘された場合でも、清掃業者へタッチアップクリーニングを依頼できるため、特段の理由がない限りは清掃業者に依頼しましょう。

ただし、プロフェッショナルクリーニングでは、一般的に壁や天井などはカバーされないため、そうした場所に汚れなどがある場合は、自分たちで可能な限り清掃する必要があります。

なお、退去時のチェックでオーナー側から壁のペイント塗り直しや大理石の床のポリッシュ、フローリングの研磨などの実施を求められた場合、その作業で部屋が汚れるため、追加清掃の費用が請求される場合もあります。

退去時のマイナーリペア対応の取り扱い

「Minor Pepair(マイナーリペア)」とは、入居期間中に発生した部屋の設備のちょっとした修理について、一定額(1ヵ所当たりSGD150~250程度が一般的)までは借主側が負担し、それを超える分はオーナー側が負担するという特約のことです。シンガポールの賃貸契約書には、基本的にこの特約が含まれています。

マイナーリペアが設定されている物件の場合、入居中であれば事前にオーナー側に報告することで、不具合対応におけるテナント負担の上限が限定されますが、退去時のチェックで判明したものは、全額が請求される可能性があるので注意する必要があります。そのため、修繕費用が高額になりそうな不具合は入居中にオーナー側に報告し、マイナーリペア対応で修理や交換を行うようにしましょう。

また、オーナー側の好意で退去時に判明したものもマイナーリペア額をテナント負担の上限としてくれる場合もありますが、逆にマイナーリペア額よりも安く修理できそうなものまで、上限がそのまま請求されるケースもあります。そのため、軽微な修繕などは、可能な限り退去前にハンディマンなどを手配して対応するようにしましょう。

退去時に揉めやすいポイントとその交渉例

1. 壁のペイント、大理石の床のポリッシュ、フローリングの研磨

どんなに気を付けて部屋を使用していた場合でも、少なからずキズや汚れはついてしまうもの。しかし、通常の摩耗損耗としてテナントに請求しないとするオーナーがいる一方で、少しのキズや汚れでも全体のペイントやポリッシュ、研磨を行うことを主張するオーナーがいることも事実で、その場合は費用負担の交渉を行うことになります。

最もテナント負担が少ないマイナーリペア額を上限とする交渉から、2~3割をテナント負担とする、さらには50/50(折半)にするなど、粘り強くオーナー側と交渉することが求められます。ただし、子供が壁に落書きしてしまった、ポスターや絵を飾るために壁に穴を空けてフックを取り付けたなど、明らかにテナント側に非があると判断された場合は全額負担もやむを得ないところです。

なお、部屋全体のペイントはSGD1,000程度から、場合によってはSGD3,000を超えることもあります。汚れの程度や場所によっては、ペンキを買って自分たちでペイントすることも選択肢のひとつになるでしょう。

2. 家電製品のパーツの一部が破損または紛失

よくあるケースとして、冷蔵庫内のプラスチック製のトレーやシェルフが割れてしまう、オーブンのパーツを紛失してしまうなど、その使用自体には問題ないものの、備品の破損や紛失で同じものに交換を求められることがあります。しかし、製造から10年以上経過したものやマイナーブランドの場合、シンガポール島内にパーツの在庫がない、あるいは廃版となってパーツを製造していないことも多く、そうしたケースでは補償という形で決着させることがあります。

ただ、補償額の根拠を示すことは難しく、オーナーの提示額に納得できない場合は、金額交渉することになります。その際、あまりにも古い家電製品であれば、そのまま次のテナントに引き継がせるのではなく、この機会に新しいものに交換することをオーナーに打診し、テナント負担の上限をマイナーリペア額とすることも案のひとつとなります。

3. 備え付け家具のキズや汚れ、不具合

生活する上でついたキズや汚れは、通常の摩耗損耗として取り扱われることが一般的です。一方、テーブルの脚や椅子の背もたれのグラつきなど、自分たちでは対応が難しいものはハンディマンに修繕を依頼したいところですが、オーナーの中にはそのまま修理することを認めず、頑なに新しいものへの交換を主張するケースや、購入当時の金額の補償を求めるケースがあります。

このような場合は算定の基準として、購入当時の領収書の提示をオーナー側に要求する必要があります。ただし、あまりにも古い家具の場合は当時の金額を誰も把握しておらず、領収書も紛失してまっていることがあるため、最終的に請求金額の妥当性を判断できずにマイナーリペア額が上限となることもあります。

また、もし購入当時の金額がわかった場合でも、経過年数(テナントが何組入れ替わって使用したかなど)に応じて評価額を算定すべきであり、10年前に購入したものをわずか2年しか使っていなければ、1/5を相当額とするような交渉も場合によっては必要でしょう。

なお、日本人駐在員の方の中には、期間限定の海外赴任の間に日本ではできないような体験をしようと、モデルルームのような豪華絢爛な家具が設置されているような部屋を選ぼうとするケースがたまに見受けられます。しかし、過去には1脚SGD4,000の革張りのダイニングチェアを、テナントがメンテナンスをしなかったという理由で全額負担となったこともあります。他人の所有物を使用させてもらう賃貸物件での生活において、高級な家具が設置されていることはむしろリスクだと考えた方がいいでしょう。

セキュリティデポジットを守るうえで見落としがちな注意点

1. 次のテナント候補の内覧への協力

一般的な賃貸契約書では、契約終了日(途中解約日)の2ヵ月前から次のテナント候補による内覧を受け入れることとされており、特段の事情がない限りは、受け入れに協力する必要があります。

そのため、自分の部屋を他人に見られることへの抵抗感から退去後に内覧をして欲しいと要求したり、オーナー側からの内覧リクエストに非協力的な対応を続けた場合、オーナー側から機会損失を被ったとして、内覧ができなかった期間に相当する賃料を、セキュリティデポジットから差し引かれてしまう可能性があります。

できるだけ多くのデポジットの返金を受けるためにも、居住中の内覧には協力的な対応を行うことをおすすめします。

2. 必要な修繕の先送り

通常、部屋に不具合などがある場合は、退去前にテナント自身で、あるいは業者を手配して修繕しておくことが求められます。もしハンドオーバー時に多数の不具合が見つかった場合には、その原状回復を行っている間は次のテナントが入居できず、賃料収入が得られないという理由から、未収入期間に相当する賃料がセキュリティデポジットから差し引かれてしまう可能性があります。

特に、壁のペイントや大理石の床のポリッシュ、フローリングの研磨など、大掛かりな作業が必要となった場合は、原状回復期間が1ヵ月近くに及んでしまうこともあります。そのため、必要な修繕は先送りせずに、作業期間を考慮した余裕を持った対応を行いたいところです。

セキュリティデポジットの返金期日

シンガポールのセキュリティデポジットの返金期日は、法律で一律に定められてはいませんが、一般的な賃貸契約書では、ハンドオーバー(鍵の返却)後、14日以内に返金すると記載されているのが一般的です。ただし、原状回復が必要となった場合は、全ての作業終了から14日以内と解釈される場合もあります。

なお、物件オーナーが海外在住者、またはハンドーバー当日にシンガポールを不在にしていた場合などは、オーナー側エージェントによるハンドオーバー時の確認とは別に、後日オーナーが部屋を訪問して最終確認するケースもあるため、必ずしも規定の日数までに返金されるものではないことに注意しましょう。

セキュリティデポジットが返金されない場合の対応

全ての精算が完了しているのにセキュリティデポジットの残額がオーナーから期日通りに返金されないといった場合は、まずは弁護士に「Letter of Demand(督促状)」の作成を依頼し、Registered Post(書留郵便)でオーナーに郵送します。ただ、この督促状に法的拘束力はないため、通知を受けてもなお返金に応じない場合は、「Small Claims Tribunals(少額請求裁判所)」の制度を利用することを検討します。

ただし、少額訴訟の対象となるのは2年以下の賃貸契約に限られます。また、請求の原因発生から1年以内に申し立てを行わなければならないうえに、対象となる請求金額はSGD10,000以内に限る(最大SGD20,000まで可能ですが、原告・被告の双方の合意が必要なことから返金に応じない時点でオーナーが合意する可能性は低い)などの制限もあるため注意が必要です。

最後に

トラブルが多いということで、シンガポールの物件オーナーに対してあまりいい印象を抱いていない人もいるかもしれません。ただ、実はオーナーの中には、自分の部屋を綺麗に長く使ってくれたことに感謝を示し、電球切れや軽微な不具合くらいであれば不問として、セキュリティデポジットを満額を返金してくれる人も少なくありません。

どれだけ厳密な契約を交わしたとしても、最終的には「人と人」の関係性です。入居時・入居中を問わず、もしオーナーと直接会う機会があれば、部屋の使用についての謝意を示すなどして、是非とも良い関係性を構築しておきたいところです。

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投稿更新日:2026年05月20日

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